私の研究 (ここをクリック)は、大学時代に出会ったとある先生の博士論文に大きな影響を受けています。そこで見たものは、物理学で出てくる「オームの法則」が、生物(植物)を介した物質交換「フィックの第一法則」と同じ形をしている、というものでした。このような「類似性(アナロジー)」は、1960年代に法則化されており、この分野では広く知られていることです。しかし当時学生だった私は、「植物を物理法則で表現することができるなんて!!」と純粋に感動したものです。

この経験が、物理学と生物学の融合にとどまらず世の中のあらゆる専門分野を俯瞰し、類似性を見出し、統合し、問題解決につなげる「学際研究」や政策提言への興味にも繋がっています。

最近は、下記のテーマに取り組んでいます。(学生募集中!茨城大学農学部水環境再生工学研究室と連携しています)

1. 緑地や樹木の大気浄化作用の解明

くず餅で知られるつる性植物「クズ(Pueraria lobata (Willd.) Ohwi)」は繁殖力が旺盛で、土地を侵食して人間生活に影響を及ぼす迷惑な侵略性生物です。土地の管理者はこれを悪とし駆除を試みていますが、これにはとてつもないコストを要します。ところが、こんな迷惑な存在にも実は「良いところ」があるとしたら、どうでしょうか?緑地(グリーンインフラ)には多様な機能がありますが、我々はそれらの全てを解明しきれていません。この研究では、茨城大学の教員や高速道路管理会社と協同して、主に野外観測によってクズの大気清浄化機能を評価し、環境問題の解決に繋がる新しい選択肢(オプション)を模索します。
<関連リンク>
・産学連携共同研究「クズプロジェクト」(茨城大学, NEXCO東日本)

クズプロジェクト

2. 地球温暖化の正しい評価

日本の地上気温は100年あたり約1.2℃の速度で上昇を続けています。ところが、地球温暖化に伴う長期の地上気温の上昇率(地球温暖化量)を正しく評価することは、簡単なようで難しいものです。周辺環境の変化や都市化(ヒートアイランド)、さらには統計方法も時代とともに頻繁に変化し、気温観測に誤差を及ぼすからです。また、大雨が増えたと報道で言われますが、対象とする期間や地域の選び方によっては、理論的にあり得ない速度で大雨が増えていることになってしまいます。この研究では、気温・降水量・湧水水温などの野外観測を行いつつ、あらゆる角度で過去の長期観測データの解析を行い、日本の地球温暖化の正しい評価を目指します。共同研究機関の例:気象研究所・University College Dublin
<関連リンク>
・解説記事「日本の気温は、地球温暖化で何度上昇したのか?
・解説記事「20世紀前半の中国の気温も、現在と同じくらい高かった?
・解説記事「地球温暖化による大雨への影響評価には100年以上のデータが必要
・解説記事「地球温暖化によって、日本の大雨は何割増えたのか?
・近藤純正ホームページ「K134.気候・環境変化と森林蒸発散・湧水温度(講演)

温暖化の評価

3. 過去の気温上昇と農業生産への影響の評価

人類は、過去数千年の間に様々な気候の変動を経験し、乗り越えてきました。そう聞くと、「今は地球温暖化という大問題に直面しているじゃないか」と思うかもしれません。ところが、過去100年の間には現代の気温上昇にも匹敵する温暖な気候も存在しました。そして現代も、都市部はヒートアイランドによって将来の地球温暖化を先取りしています。このような気候の変化に対して人間がどのように対応(適応)してきたかを紐解けば、今なすべきことが見えてきます。この研究では、アーカイブス(文献史料や考古資料)を利用しながら江戸時代以降の気候を復元しつつ現代の豊富な観測データを組み合わせて解析し、特に気候の影響を受けやすい農業生産活動への影響を明らかにすることに挑戦します。共同研究機関の例:成蹊大学・気象研究所
<関連リンク>
・解説記事「江戸時代にもあった現代に匹敵する猛暑年
・解説記事「災害は温暖化そのものではなく寒暖の繰り返しで起こる
・解説記事「気候変動のリスクを超える都市農業の適応能力

アンモニア観測風景

4. その他の研究テーマ

以下に、研究テーマの一例を示します:

・霞ヶ浦流域における大気アンモニア・酸性ガス・エアロゾル濃度の評価(茨城県霞ヶ浦霞ケ浦環境科学センターと協同)
・産学連携共同研究「鶏舎内及びコンポストにおける気相中のアンモニアの定量」(黒田研究室・電力中央研究所・畜産関連企業と協同)
・精緻な大気-植生-土壌多層モデル(SOLVEG)を用いた数値解析(気象研究所と協同)

アンモニア観測風景
SOLVEG
林内雨

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